張占魁派形意門八卦掌

【特色】程廷華の八大掌に形意五行拳の打法、十二形拳の身法を加えている。通常、八卦拳の構え(推掌。張派では倚馬問路)
においては下の掌は上の腕の肘の下あたりに置くが、この派では腹の前あたりに置く。形意拳(三体式)においても同様に大架
の手法が強調されている。これらには杆法(棒術)の勁道も折り込まれているとされ、大架になったのも、それが原因であると思
われる。下の写真に杆を持たせるとちょうど腕の位置が良いことでもそれが分かる。


《張占魁》1865〜1938年 字は兆東、清の同治四年八月に河北省河間県後鴻雁村の農家に生まれる。初め王姓の武術家に
就いて大紅拳を学んだ。しかし、華北地方一帯に大旱魃が発生、農業では生活できなくなったので天津に赴き果物屋を営む。李
存義と知り合いとなり、その縁で劉奇蘭の門下に入って形意拳の教えを受けた。光緒三(1881)年には程廷華と知遇を得て、董
海川公門下に入った。この時も李存義の紹介であった。八卦掌は程廷華が董海川公に代わって教えを授ける「代師伝芸」で学ん
だ。光緒二十六年に程廷華が亡くなってからは天津に帰り、県衙や営務処頭領など警備関係の仕事をして、多くの盗賊を捉えた。
宣統三(1911)年には中華武士会に参加、親しく武術を教授した。
民国八(1919)年に弟子の韓慕侠が「九華山に赴いて董海川の師弟・応天文から『反八卦』(裏技)を学んだ」と言い出した。それ
を快く思っていなかった二人の仲は険悪なものとなった。練習試合をしている時に、互いに譲らず、ついに張占魁が韓慕侠の胸を
一撃、韓は吐血して倒れた。これを契機に二人は中華武士会を離れた。後に張の弟子の趙新道は韓慕侠から反八卦を学んでいる。
大師兄にしばしば打ち倒された趙は韓の功夫の深いことに感嘆したという。
天津に帰った張は基督教青年会(YMCA)ビルに中華武術研究会を設けて武術を教授した。以後、形意八卦派は天津派を中心に
華北一帯に広まり大勢力となった。この頃「郭雲深の門人」ということで訪れた王向斉と兄弟の契りを結んだ。張の晩年の弟子には
王からトウ(*)法や推手を学んだ者も居る。
民国二十四年には蕭海波が新聞「新天津報」で「江湖故事記」を発表し「董海川の師弟」であると称して大きな非難を受けたが、蕭
が嘘であることを認めたので、張はその身の安全を図ってやった。
晩年の張は胃腸の具合が優れず、食道癌で民国二十七年7月に亡くなった。享年73歳であった。
生涯に教えた生徒の数は数千人とされるが、王俊臣、劉晋卿、裘稚和、李剣秋、趙新道、姜容樵、銭樹樵、張雨亭などがよく知ら
れている。日本に本格的な形意、八卦、太極の各拳を伝えた王樹金も張の晩年の弟子である。

                   
      形意拳・三体式           八卦掌・倚馬問路

張占魁派の八卦掌は、李存義派と共に、天津派と称される。いずれも程廷華の系統を引いている。晩年、足を悪くしていたとされる
が、この写真の三体式もやや棒立ちの感がある。また後ろ足が真横を向いているのも、現在の多くの形意拳とは異なっている。
この派の八卦掌は、王樹金が台湾、日本に伝えている。八卦遊身掌は中華民国教育部と同国術会が編纂した「国術叢書」の三で
紹介されている。

八卦遊身掌
一、起式予備
二、混元トウ(*)
三、平托掌
四、単托掌
五、第一掌(鳥龍擺首)
六、第二掌(雲龍三現)
七、第三掌(星流影集)
八、第四掌(鷹熊交輝)
九、第五掌(金鵬掠波)
十、第六掌(風擺楊柳)
十一、第七掌(横掃千鈞)
十二、第八掌(蒼龍抖甲)
十三、休息

(*)トウは「椿」の「日」が「臼」の字。

王樹金に依れば、この掌法の前に八卦連環掌があり、それに習熟してから、遊身掌の練習に入る、ということである。

《姜容樵》1891〜1974年 字は光宇、河北省滄州の人である。幼い頃から私塾を開いていた叔父の徳泰から学問を、義理の兄
の陳玉山から秘宗拳を学んだ。清の宣統元(1909)年に張占魁に入門し、形意拳、八卦掌の教伝を受けた。また李景林、李雨三、
湯士林に武当剣、太師鞭、太極拳の教えを受けた。民国九(1920)年には津浦鉄路局の職員となったが、この頃から武術の教授
を始めた。民国17年には上海に尚武進徳会を設立、尚武楼叢書の出版に力を注いだ。民国二十一年には南京中央国術館の編審
処処長に就任、国術叢書の主編となった。晩年は上海で暮らし、武術資料の整理、研究に尽力した。晩年は失明したが、武術に対
する情熱はいささかも衰えることはなかった。『八卦掌』は民国52年に出版されたもので、八卦掌に関する資料の少なかった時期に
広く受け入れられ、各方面に大きな影響を与えた。

                    
                    八卦掌・倚馬問路

                                     八掌
                                     単換掌
                                     双換掌
                                     双撞掌
                                     穿掌
                                     挑掌
                                     翻身掌
                                     揺身掌
                                     転身掌